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離婚調停・訴訟中の夫(妻)に財産を相続させたくない場合、どうしたらよいですか?

たとえ離婚調停や離婚訴訟の最中であっても、戸籍上ではまだ夫婦関係にある以上、どちらかが死亡すれば、他方がその法定相続人になります。つまり、離婚が成立する前に自分が死亡してしまったら、相手方にも自分の遺産が相続されてしまうということです(離婚調停や離婚訴訟は終了します)。

離婚しようとしている相手方に自分の遺産を渡したくないという場合には、遺言書作成などの対策を講じておかねばなりません。

今回は、離婚調停や離婚訴訟の最中に夫または妻に遺産を相続させないための対処方法についてご紹介します。病気などで余命が短くなっている方、危険な仕事に携わっていて万が一のケースを心配されている方などは、是非参考にしてみてください。


配偶者(夫や妻)は常に相続人になる

離婚紛争が起こっている場合、通常は「相手方には自分の遺産を渡したくない」と考えるものです。
しかし、離婚調停や離婚訴訟の最中であっても、夫婦のどちらかが死亡すると、その夫または妻には「常に相続権が認められます」。

特に子どもがいない夫婦の場合は、相手方に大きな法定相続割合が認められてしまうので、何の対策もしないまま離婚調停や離婚訴訟の途中で死亡してしまったら、相手方に多くの遺産が渡ってしまいます。
さらに、その後相手方が亡くなったときは、残った財産は相手方の法定相続人(子どもがない場合は両親や兄弟姉妹など)へと受け継がれてしまうでしょう。

それが不本意であれば、相手方に遺産を渡さないための対策をしておかねばなりません。

配偶者の相続割合

配偶者にはどのくらいの相続割合が認められるのか、法律上の規定内容を確認しておきましょう。

・法定相続人が配偶者のみ…100%
・配偶者以外に子どもや孫がいる場合…配偶者が2分の1、子ども(孫)が2分の1
・子どもがおらず、親や祖父母がいる場合…配偶者が3分の2、親や祖父母が3分の1
・子どもも親も祖父母もおらず、兄弟姉妹(または甥姪)がいる場合…配偶者が4分の3、兄弟姉妹(または甥姪)が4分の1

つまり、配偶者だけが法定相続人であれば配偶者100%、ほかに親や兄弟などの法定相続人がいても配偶者の法定相続割合は3分の2以上となります。

では、以下、離婚調停・離婚訴訟中の配偶者に対して遺産を相続させないための具体的な対処方法をあげていきます。


対策方法1 遺言書を作成する

遺言書を作成すれば、遺言者は自由に財産の承継者を指定することができるのが原則です。
たとえば、遺言書に「子どもに全部の遺産を相続させる」「親にすべての遺産を相続させる」と書いてもかまいませんし、法定相続人以外の人に対して遺贈することもできます。ユニセフや赤十字などの団体に寄付することもできます。

そうだとするならば、配偶者以外の人に財産を承継させる内容を遺言書に定めておけば、万が一離婚調停や離婚訴訟中に死亡してしまっても、配偶者には財産が渡らないのではないかとも思えます。

しかし、配偶者には、遺言によっても奪うことのできない最低限度の遺産取得分として、「遺留分」というものがあるのです。

遺留分に注意

遺言書で相続対策をする場合には、遺留分に注意が必要です。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる、最低限度の遺産取得分のことです。
遺言によって配偶者以外の人にすべての遺産を相続させたり遺贈したりしても、配偶者が「遺留分侵害額請求権」を行使すれば、配偶者の遺留分が侵害された分については取り戻されてしまうことになります。

たとえば「親にすべての遺産を相続させる」という内容の遺言書を作成しておいても、死後に配偶者が親に対して「遺留分侵害額請求」を行えば、親は配偶者に対して遺産総額に対する一定割合(この場合は3分の1)に相当するお金を支払わなければならなくなるのです。

遺留分は「お金」で請求される

遺留分が侵害されたことに納得いかない法定相続人が遺留分の権利を行使しても、自身の遺留分が侵害された分だけのお金を取り戻せるだけであり、個別の財産の取り戻しは要求できません。
たとえば、不動産を親に相続させたことによって配偶者の遺留分を500万円分侵害することになったとしたら、配偶者は親に対して500万円の支払を請求することができるだけで、不動産そのものの取り戻し(共有持分の移転)を請求することはできません。

このように、法定相続人の遺留分を侵害するような内容の遺言を残すと、死後に遺留分をめぐるトラブルが起こってしまうリスクが生じますので、遺留分には十分注意しましょう。

配偶者の遺留分割合

配偶者に認められる遺留分の割合は、以下のとおりです。
・相続人が配偶者のみ…2分の1
・相続人が配偶者と子ども…4分の1
・相続人が配偶者と親…3分の1
・相続人が配偶者と兄弟姉妹…2分の1

遺言書を作成して配偶者から遺留分を奪ったとしても、配偶者が遺留分侵害額請求権を行使すれば、遺産を取得した人は、遺産総額に対する上記の割合の額までのお金を配偶者に支払わなければならなくなる可能性があります。

なお、遺言にはいくつか種類がありますが、できるだけ「公正証書遺言」にすることをお勧めします。自筆証書遺言は手軽でいいのですが、公正証書遺言に比べると、死後に「無効」だとか本人が作成したものではないといった主張をされてトラブルになるリスクが高い傾向にあるからです。
また、公正証書遺言であれば、原本が公証役場で保管されますので、紛失リスクに対する手当てもできます。

以上にみてきたとおり、遺留分の問題を考えると、遺言作成という方法については100%の効果は望めませんが、しかし配偶者の遺産取得割合を大幅に減ずることは可能となります。


対策方法2 生命保険に加入する

配偶者に遺産をとられてしまうことを回避する方法として、生命保険に加入する方法も考えられなくはありません。一括で高額な生命保険に加入し、配偶者以外の親や子どもなどの親族を受取人として指定します。そうすると、万が一離婚紛争の最中に死亡した場合でも、あらかじめ指定していた受取人に死亡保険金が払われます。
死亡保険金は受取人の固有の権利であり、遺産とは扱われないため、遺留分問題に対する一定の対策になり得るのです。

ただ、保険金の受取人も法定相続人であり、保険金の額が遺産総額に比して相当多額であるという場合には、保険金はその法定相続人の特別受益と評価されて持ち戻しの対象とされるリスクがあります(一概にいえませんが、6割を超えるような場合にはそのような判断が下されるリスクが高くなると思われます)。
したがって、生命保険を利用するにしても極端な額の設定はやめておいた方がよく、その意味ではやはり100%の効果(配偶者には一切遺産を取得させない効果)は望めないでしょう。
受取人を法定相続人ではない人とするか、あるいは、遺言と併用して遺留分侵害額を減ずる方向で検討することは可能かと思います。

なお、生命保険に加入するには健康状態についての審査をクリアしなければなりませんので、すでに健康を害しているようなケースでは利用自体が難しいかもしれません。


対策方法3 相続人の廃除を申し立てる

3つ目の方法として「相続人の廃除」があります。
相続人の廃除とは、一定程度の非行があった推定相続人については、被相続人の意思により、相続人の地位を奪うことができるようにする制度です。
相続人の廃除が認められると、廃除された相続人は相続権を失い、遺留分も主張できなくなります。

ただし、これが認められるケースは極めて限定的と考えておいた方がいいでしょう。

相続人の廃除が認められる要件

相続人廃除は「相続人から相続権を奪う」という強い法的効果を伴うので、簡単に認められるわけではありません。
以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
・相続人が被相続人を虐待した
配偶者から酷い暴力を振るわれたというようなDV事案の場合は、相続人廃除が認められる可能性があります。
・相続人が被相続人に著しい侮辱をした
日常的に侮辱的な言動を繰り返されたというモラハラ事案の場合も、相続人の廃除が認められる可能性があります。
・相続人に著しい非行がある
配偶者の不貞により婚姻関係が破綻した場合や、配偶者が身勝手な理由で家出をしたり生活費を入れてくれなかったりした場合、相続人の廃除が認められる可能性があります。

ただし、当然ながらいずれも程度ないし頻度にもよるでしょうし、証拠をもって立証できなければ難しいでしょう。

相続人廃除の方法

相続人廃除を認めてもらうためには、家庭裁判所に「推定相続人廃除審判」を申し立てるか、または遺言に定める必要があります(遺言に定める場合は、遺言執行者が廃除審判の申立てをすることになりますので、必ず遺言執行者が必要になります)。
生前に自分で申し立てる場合は、申立書を作成し、申立ての理由となる配偶者の暴力や不貞などを証明する証拠とともに家庭裁判所に提出しましょう。
無事に廃除の審判が出てそれが確定しましたら、役所に届け出て戸籍に反映してもらう必要があります。


対策方法4 離婚の手続きを早めに進行させる

配偶者に遺産を相続させないためには、早めに離婚を成立させるのがもっとも根本的な対処方法となります。

離婚訴訟になっているケース

すでに訴訟となっているならば、自分の主張立証は早め早めに済ませるようにし、そのうえで相手方にも迅速な主張立証を促し、裁判所の争点整理と心証形成がスムーズに進むように努めましょう。
裁判所がある程度の心証を形成したら、通常は和解協議が試みられると思いますので、許容できる範囲でまとまるならば「和解」してしまうのがもっとも早い解決となります。
判決まで進むとなると、通常は尋問手続を経ることになりますし、判決が出ても上訴があった場合にはさらに解決が先延ばしになります。
そうはいっても、和解の余地が一切ないような事案もありますので、その場合には、できるだけ早期に結審してもらえるよう適宜タイミングをみて裁判所に働きかける必要があります。

離婚調停中のケース

調停中であれば、なるべく折り合いをつけて合意できるようにもっていきましょう。
ただし、あまりに不利な条件で合意してしまったら本末転倒なので、安易な妥協も禁物です。合意してよいか迷ったら弁護士に相談してアドバイスを受けるとよいでしょう(調停委員の話を鵜呑みにするのは危険です)。
また、話し合い(調停)による解決は難しいと判断した場合は、調停はできるだけ早く不成立にしてもらい、さっさと訴訟を提起するのが得策となります。

協議離婚が決裂したケース

協議離婚ができない場合は、まず離婚調停の申立てから始めなければなりません。
日本では離婚事件について「調停前置主義」が採用されているため、まずは調停で話し合ってみて、それでもダメだった場合に初めて訴訟を提起できるというのが原則なのです。
ただし、相手方が行方不明だとか、相手方が外国人ですでに母国に帰ってしまっているとか、調停期日には出頭しないことが明らかといった例外的な場合には、調停を経ていなくても訴訟を提起できる可能性があります。


離婚調停や離婚訴訟を有利に進めるために

離婚紛争を有利に(または不当に不利にならないように)解決するためには、法律や裁判実務に関する知識が必要不可欠となります。
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