離婚調停で相手方に弁護士がついたら不利になる?対処方法を弁護士が解説
・離婚調停の申立書が届いたが、相手には弁護士がついているらしい
・離婚調停の最中に相手が弁護士をつけたが、どう対応すればいいの?
・相手に弁護士がいるのにこちらにはいないとなると、不利になってしまうのだろうか?
離婚調停で相手に弁護士がつくと、「不利になるのではないか?」「相手の言い分ばかりが通ってしまうのでは?」と不安にかられる方が少なからずいらっしゃいます。
そこで今回は、離婚調停で相手が弁護士をつけたときの対応ポイントをお伝えします。
離婚調停中の方や離婚調停を申し立てられた方はぜひ参考にしてみてください。
1.そもそも調停は話し合いの手続
離婚調停で相手に弁護士がつくと「相手の言い分が認められてしまうのではないか?」と不安を感じる方も多いでしょうが、そもそも調停という手続は、どちらの言い分が正しいかといったことを認める(判断する)手続ではありません。あくまでも「当事者双方の合意」がないと成立せず、相手に弁護士がついている、ついていないにかかわらず、こちらが了解しない限りは調停での解決(調停成立)はあり得ません。
また、弁護士は公平中立な立場ではなく他方当事者の味方という立場ですので、弁護士の言うことが当然に通ってしまう、つまり、弁護士の言うことであれば調停委員はなんでもかんでも鵜呑みにしてしまう、というわけではありませんし、万が一そういう事態が起こったとしても、調停委員の説得に応じるかどうかはあなたの自由です。
したがいまして、仮に調停委員が相手の弁護士の言い分に同調的な態度を示していたとしても、あなたが受け入れられない条件は受け入れなければいいだけの話、ということに一応はなります。
そういう意味では、相手に弁護士がついたからといって、相手の言い分に沿った内容で調停が成立してしまう=不利になる、ということはありません。
しかし、現実はそんなに単純な話ではありませんね。
以下でくわしくみていきましょう。
2.調停が不成立となった場合の見込みを踏まえる
調停段階からよく把握しておくべきなのは、調停で解決しなかったらその先はどうなるのかという見込みです。調停が不成立となると、通常は、離婚については離婚訴訟、婚姻費用については審判での解決を図ることになります。
これらは裁判所が結論を下す手続であり、裁判所は、十中八九、そのときの裁判実務の考え方に従った内容の結論を下すでしょう。
したがいまして、多くの事案では、調停段階からある程度結論が見えています。調停段階から担当裁判官が自身の見解を示すこともあります(少ないですが、審判になったら調停段階で示された見解とは異なる結論が下された例もありましたが)。
調停委員は、それを意識して、仮に調停を拒否しても審判になったら結局こういう結論になりますよ、訴訟になったら裁判所はこういう判断をしますよ、などと言ってあなたを説得しようとしてくるでしょう。
そのとき、裁判実務に照らしておよそ通らないだろうと思われる言い分に固執し、それゆえに調停を不成立としても、紛争解決が無駄に延びて、その分、時間も手間も費用も余計にかかってしまっただけという事態になりかねません。
したがいまして、調停を不成立とすべきか否かを判断するにあたっては、訴訟または審判になったらどういう結論が下される可能性が高いのか、訴訟または審判になったら結論が出るまでどのくらいの期間がかかるのか、どのような手続的負担があるのか、といったことをよく踏まえて検討する必要があるのです。
3.相手に弁護士がついたら当方も弁護士をつけるべきか?
離婚調停で相手に弁護士がついている場合、こちらも弁護士を立てるべきなのでしょうか?状況にもよりますが、多くのケースでは弁護士をつける方が無難といえます。以下で理由をお伝えします。
3-1.不当な結果を回避できる
前述のとおり、調停は話し合いの手続であり、嫌であれば応じる必要はないのですが、実際のところは、調停委員会の説得に従った内容で調停成立に至る事案が多いといえます。この傾向は、双方または一方が弁護士をつけていない事案において特に顕著だと思います。
一般の方にとって、調停委員から言われたことは、すべて「正しい」、つまり、それが裁判実務の考え方なんだろうと思ってしまいますよね。
しかし、調停委員が誤った(あるいは不十分な)知識に基づいて、裁判実務に照らして適切とはいえない見解を述べてしまうことも、決して少なくはないというのが実感です。
例えば、ごく最近私が経験した事件では、婚姻費用の額を決めるにあたり、調停委員が大学生の子を対象に含めずに調停を進めているということがありました。理由は、「もう成人しているから」ということでしたが、裁判実務では、成人していたとしても大学生であれば未成熟子として扱われる(つまり婚姻費用の対象に含める)可能性が高いので、不適切な見解だったといわざるを得ません。
離婚事件にある程度精通している弁護士がついたら、たとえ調停委員が不適切な見解に基づいて調停を成立させようとしても、的確に反論してそのような事態を回避することができます。
調停委員の言っていることにどうも納得がいかないという場合には、早めに弁護士に相談してみるのが得策です。
3-2.後悔しない対応をできる
人生において離婚はそうそう何度も経験するものではありませんが、離婚調停は、養育費や財産分与など、あなたのその後の生活に大きな影響を及ぼすとても重大な事柄について話し合う場です。早く解決したいという焦りもあるかもしれませんが、自己判断で適当に対応すると、後に「もっと他にいえたことがあるのではないか?」と後悔する可能性が高まります。
実際、離婚調停を成立させた後に困って相談に来られた方の話を聞いて、「なんでそんな条件で調停を成立させてしまったの?」と驚いてしまうような事案もたまにあります。
そのような事態を避けるためには、調停を成立させてしまう前に信頼できる弁護士に事件処理を依頼し、万全の体制で臨むという選択がベストでしょう。
また、期日では緊張してしまうという方も多くいらっしゃいますし、時間も限られています。自分の主張にとって必要な事実関係はすべて言い尽くせているのか、有利な資料はすべて提出できているのか(あるいは相手に出してもらうべき資料はすべて求められているのか)、そういう面で不安があるならば、やはり後悔を避けるために弁護士に依頼するのが無難といえるでしょう。
3-3.弁護士をつけなくても良いケースとは?
離婚調停において相手に弁護士がついたとしても、必ずしも弁護士をつける必要はありません。特に以下のようなケースであれば、弁護士は不要かもしれません。相手の言い分に納得できる
相手の言い分が正当で十分に納得できる範囲内のものならば、わざわざ弁護士をつけて対応する必要性は低いでしょう。ただ、ご自身としては「主張できることはない」と思っていても、実際には法律上何らかの主張や反論ができる可能性はあります。「言い分はない」と決めつける前に、一度弁護士へ相談してみるのもいっこうでしょう。
婚姻期間が短くて子どももいない
このような事案では、親権、養育費、財産分与などの争点がないことが多いので、事案としてはシンプルになります。大きな金銭問題もないならば、弁護士をつけても費用対効果の面でメリットが生じない可能性があります。
もっとも、あくまでもケースバイケースであり、具体的な事案の内容によって弁護士の必要性は異なるので、一度弁護士に相談してアドバイスをもらっておく方が安心でしょう。
4.相手が弁護士をつけた場合の対処方法
まずは一度、離婚トラブルに力を入れている弁護士に相談してみましょう。実際に依頼するかどうかにかかわらず、現状を把握してもらった上で実務経験に照らしたアドバイスをもらうことが重要です。その結果、弁護士をつけるまでの必要はないかなと判断すれば、相談だけで終了してもかまわないのです。
費用対効果を踏まえて、弁護士のアドバイスを活かしてしばらく自分で調停を継続してみるという選択もあり得ます。
相談した弁護士が信頼できる人で、すべて任せてしまった方が安心だと思われるなら、そのまま調停手続の代理を依頼するのがベストでしょう。
相手が弁護士をつけたとき、自己判断のみで対応することは避けた方がよいでしょう。頭の良さや議論に自信をもっている方が特に陥りやすい事態ですが、一般的な口の上手さやアピールの上手さといったもので調停をコントロールできるかというと、それはあまり期待できません。仮に調停委員は自分の言うことの方に同調的だという感触があったとしても、相手に弁護士がついた以上、裁判実務に照らしてどうなのかという点から話が進んでいく可能性が高いのです(その弁護士が離婚事件にあまり精通していない場合は別ですが)。
また、担当裁判官が事件の内容をきちんと把握して期日前に的確な指示を与えているような場合には、相手に弁護士がついているかどうかにかかわらず、やはり裁判実務に照らしてどうなのかという線で話が進んでいくでしょう。
最近は無料相談を受け付けている事務所も多いので、まずは離婚事件に精通した弁護士の意見を聞いてみましょう。
なお、離婚調停で弁護士を立てた場合のメリットや弁護士の選び方についてはこちらの記事に詳しく説明していますので、よろしければご参照ください。
練馬法律事務所は、離婚案件に積極的に取り組んでいます。相手に弁護士がついて不安を感じているというような場合は、一度お気軽にご相談ください。
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