2021.12.03
公正証書を作成すれば離婚できるのか?
離婚する際には公正証書を作った方がいいと思っている人は案外多い印象です。
しかし、公正証書を作る意味(意義)についてもきちんと理解している人は少ないように思います。
なぜかはよくわからないけれど公正証書を作るべきなんですよね?
又は、
公正証書は作らないといけないものなんですよね?という方もいます。
最近の離婚届の用紙には、養育費の取り決めについて公正証書を作成しているかどうかを尋ねる項目もあるので、上記のように思われる方も多いのかもしれません。
離婚の仕方には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚などがありますが、公正証書離婚というものはありません。
離婚の際の公正証書は、通常、協議離婚をするときに作成されることがあるものであり、これを作らないと離婚できないとか、逆に、これを作れば離婚できるという効果はありません。
協議離婚は、役所に離婚届を提出し、これが受理されることによって初めて成立するので、公正証書で「離婚する」と定めても、離婚成立という効果は生じないのです。
そうだとしても、公正証書で離婚すると約束したのであれば、どちらかがその約束を守らず離婚届の提出に応じなかった場合には、裁判などで離婚を強制できるのでは?
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
なかなか鋭い考えですが、残念ながらそれもできません。
お金の支払いなどとは異なり、身分行為に分類される離婚という行為は、たとえいったん約束したとしても、まさに離婚をする(協議離婚の場合は役所に届け出る)そのときにその意思がなければならないもの、過去の約束に基づいて当事者に強制することはできない性質のものなのです。
したがいまして、この記事のタイトルの問い、
公正証書を作成すれば離婚できるのか?
という問いに対する端的な答えは、ノー。そうとは限らない、ということになります。
一方、調停離婚の場合はどうかというと、裁判所で当事者が離婚に合意し、これを調書に定めることを確認したとき(調停成立日)に離婚が成立してしまいます。
調停離婚の場合でも後日役所に離婚を届け出る必要はありますが、その届出をしなくても、離婚成立という法的効果は調停成立日にすでに発生しており、この点が協議離婚と決定的に異なります。
調停離婚の場合は、役所に届け出ないと離婚が戸籍に反映されないというだけであり、届出をするべき側が期限内(調停離婚成立から10日以内)の届出を怠った場合には、他方当事者が届け出ることも可能となります。
協議離婚の場合は、公証役場で公正証書を作成しても確実に離婚できるかどうかわかりませんが、調停離婚の場合は、裁判所で離婚調停を成立させてしまえば離婚が確定するということです。
ちなみに、裁判離婚の場合は、離婚認容判決が確定したときに離婚成立となります。
さて、公正証書を作成しただけでは確実に離婚できるかわからない、ということになりますと、公正証書を作成して協議離婚する場合には、そのリスクに関する手当てをしておく必要が生じます。
弁護士が関与している場合は、協議離婚の届出をする側(妻と仮定します)が、夫において必要事項を記入した離婚届を公正証書を作成する場(公証役場)でもらい受け、公正証書作成後に離婚の届出をするようにすることが多いかと思います。万が一、その場で離婚届をもらえなかったら、公正証書の作成には進みません。
ただ、このような手当てだけで十分ともいえません。
協議離婚の場合は、夫婦のいずれかから離婚届不受理届出がなされていると、双方が作成した離婚届を提出しようとしても受理されない(つまり離婚が成立しない)のです。
離婚届を提出するときに不受理届出がなされているかなされていないかを確実に確認するすべはないので、届出がなされていた場合のリスクを考えておかなければいけません。
私の場合は、離婚届受理(=離婚成立)を解決金や財産分与などの離婚給付の条件とするといった手当をすることが多いですが、ケースバイケースですので、その事案に最適な条件をその都度考えて適用するようにしています。
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